【特集】富士御殿場蒸溜所 第1回

第一回

 標高3776m、古くから日本の象徴の一つとして知られている富士山。2013年には関連する文化財群と世界文化遺産として登録され、日本のみならず世界中の人々にますます注目されることとなりました。
 この富士山の麓に、やはり日本を代表するすばらしい蒸溜所があるのをご存知でしょうか?その蒸溜所こそ「キリンディスティラリー富士御殿場蒸溜所」。ジャパニーズウイスキー「富士山麓」を製造している蒸溜所です。
 富士御殿場蒸溜所の建設が開始されたのは今からおよそ40年前の1972年8月。日本のビール会社であるキリンビール、アメリカのスピリッツ業者J.E.シーグラム、イギリスのウイスキー業者シーバスブラザーズの三社による合弁会社「キリン・シーグラム社」により建設が進められました。稼働は翌年、1973年11月。それから今まで休まずウイスキーの生産を続けています。
※2002年より「キリンディスティラリー株式会社」(キリンビール株式会社の100%子会社)が経営
 1972年当時、国産ウイスキーの製造自体はいくつかの会社で既に始まっており国産ウイスキーのブームは大きく高まっていました。そんな中、同社も「ビールに次ぐ柱」を求め蒸溜所の建設に着手したそうです。
 さて、ところでなぜキリン・シーグラム社はここ富士・御殿場に蒸溜所を構えたのでしょうか?単に富士山が日本のシンボルだから?勿論、そんなことはなくこの地が選ばれたのには明確な理由がありました。
 御殿場の地が選ばれた理由は3つ。一つ目は「水」。蒸溜所の背後の聳える富士山へ降り注いだ雨水や雪解け水は、なんと50年もの時間をかけて富士山の地層によりゆっくりろ過され地下へ少しずつ流れていきます。その結果、不純物が除かれ代わりにミネラル分が含まれた「富士の伏流水」と呼ばれるこの地下水が産み出されます。この水こそがウイスキー造りに最適な水なのです。
 二つ目の理由は「気温」。ウイスキーの熟成をゆっくり進めるために欠かせないのは冷涼な気候です。もしも気温が高すぎれば、樽の中に入っている原酒はあっという間に水分を蒸散させ、味に深みを持たせる間もなく減っていってしまいます。標高600mの土地に建てられた富士御殿場蒸溜所は、仙台市と同じ程度の平均気温(19℃前後)しかなくウイスキーの熟成には最適な気温を保っています。
 そして三つ目の理由は「湿度」。温度と並んで湿度も、ウイスキーの熟成には大きく関与します。湿度が低く乾燥している状態では、樽材が乾いてしまいやはり水分の蒸散が過剰に進んでしまいます。御殿場は、一年を通して霧が出る土地であり年間平均湿度が80%を越える土地です。まさしくウイスキーの熟成に適した湿潤な気候と言えます。
 これらの理由が、ここ御殿場に蒸溜所を構えることとなった要因です。また、御殿場は大都市東京や名古屋へのアクセスも良いという利点も持っておりそこも選ばれるポイントになったのではないでしょうか。
 前述してたようにこの富士御殿場蒸溜所は日本・米国・英国を代表をする酒類メーカーにより建設された蒸溜所です。目指したのはまだまだ模倣ウイスキーが跋扈する日本市場に「本物」を売り込むこと。当然ながら、建設に際しては各社の持てる技術が全て注ぎ込まれました。結果、海外からの技術を本格的に持ち込んだ蒸溜施設などほとんどない当時の日本に、最新鋭などという言葉では生ぬるいほどの技術と施設を組み込んだ他に類を見ない複合蒸溜所が完成することとなったのです。
 現代になってなお、富士御殿蒸溜所程の複雑な蒸留施設を1蒸溜所内で併せ持つ施設は世界的に見ても殆どありません。そしてこの施設の持ちうるポテンシャルを最大限活かすことで「クリーン&エステリー」なウイスキーを造ることができるのです。
 さて、では実際にどのような施設をここ富士御殿場蒸溜所は持っているのでしょうか?
 次回からは蒸溜所内部について迫っていきます。

蒸溜所のエンブレム

まるで西洋の王族が造ったかのようなエンブレム。
よく見ると馬・鳥・獅子の三体の動物が象ってあります。
一説によると、「鳥」はアメリカの国鳥である「ワシ」、すなわちシーグラム社を。「獅子」はイギリスの象徴であり、すなわちシーバスブラザーズ社を意味しているのだとか。真相は蒸溜所に行けば掴める?

蒸溜所を囲む森

富士山の麓から広がる広い囲まれた御殿場蒸溜所。木々が生い茂るこの緑溢れる環境も、ここで生まれるウイスキーに他では出し得ない味わいを与えています。
ここの木々の下には、清冽な「富士の伏流水」が流れており、蒸溜所では3ヶ所の井戸からその水を汲み上げています。なお、ここで生まれた水はあの「キリン・アルカリイオンの水」としても販売されています。

清らかで奥深い味わいと、豊かな樽熟香

富士山麓のこだわりは「50度」という度数。加水を最小限に抑えることで、香味成分をより多く残すことに成功しました。更に、冷却ろ過を行わない「ノンチルフィルタード製法」を採用することでその個性を更に強化。驚くべき香り高さと奥深い旨みを味わうことが出来ます。

〜おすすめの飲み方〜

ハイボール


富士山麓の個性を手軽に楽しめる飲み方。

少し濃い目がお勧めです。

ロック


ストレートの力強い味わいから、少しずつ柔らかに変わっていく個性が楽しめます。

水割り


香り・味わいをじっくりと楽しみたいなら水割り。
原酒本来の個性が華開きます。

キリンディスティラリー 富士御殿蒸溜所

[住所]〒421−0003 静岡県御殿場市柴怒田970
[TEL]0550−89−3131
アクセス
[電車利用]JR御殿場駅よりタクシーで20分
[車利用]東名高速御殿場I.Cを山中湖方面に降り、国道138号線を直進約6km進んだ右側
[設立]1973年
[発酵槽]ステンレス…8基
[蒸溜器]初溜…2基、再溜…2基、その他…連続式
[仕込水]富士伏流水
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